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強光子場科学研究懇談会 設立主旨 |
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これまで「光」および「光と物質の相互作用」に関わる探求は、物質の基礎構造を解き明かしたばかりでなく、人類の日常生活の基礎を築いてきた。特に1970年代に始まったレーザー技術の発展は現代社会のあらゆる側面でわれわれを支えている。近年の基礎・応用研究もまた、レーザー光という高輝度で単色性・干渉性の高い光源を用いて目覚しく展開してきたことは周知の事実である。
そして近年、このレーザー工学とそれと密接な連携をもつ基礎学術の分野で、極めて大きな進歩が記された。それは、光の強度をこれまでとは比較にならないほど大きくすることに成功した技術革新に端を発している。すなわち、物質の構成要素である原子や分子の内部での電場と同じ位か、それより何桁も大きな電場を光によって作ることができるようになった。このような強い光電場は「強光子場」と呼ばれている。強光子場下では、物質変換を意のままに制御することが可能となると期待されるため、今、基礎科学の分野では、物理学、化学、工学の研究者が、化学反応や物質変換の制御を強光子場下で達成するべく学際的な努力をはじめつつある。
そのような強光子場を気体と相互作用させると、極めて短い波長(軟X線領域)の高輝度光が発生することも報告されており、レーザーによる微細加工の現状での限界を大幅に越える展開が期待されている。さらに、強光子場を液体や固体に照射すると、輝度の高い超短パルス特性X線が発生することが報告されており、時間分解X線回折法により結晶構造や液体構造を実時間で観測することが可能となりつつある。また、X線ばかりでなく、電子、プロトン、原子イオン、中性子などの粒子をパルス状に、かつ、高エネルギーで生成できることも明らかになっており、新たな超短パルスビーム源の開発、さらに、それらを用いた新たな物質計測法の発展が期待されている。
また、生体分子の観測にも強光子場制御の技術が利用され始め、強光子場によるプラズマ生成は星の生成など宇宙現象の基礎モデルを提供するとも考えられている。さらに、高速プロトンを用いたポジトロンの発生の医療への応用も検討されている。このような近年の研究動向は、物理学・化学・生物学にまたがる広い分野の研究者が情報を交換し、連携を持つことの重要性を示しているとともに、学術の展開を支える粒子源、計測技術などの新たな技術開発が求められていることを示している。このことは、同時に、この振興分野が次世代の基盤技術を支える新しい産業のシーズの宝庫であることを示している。
今、この新しい学際領域である「強光子場科学」の分野において、大学や公的機関の研究者、企業・産業界の研究者が学術・技術の両面にわたる交流を、そして、議論を自由に行うことのできる場を設けることは、日本だけでなく世界における次世代の基礎学術・基礎産業の発展の上で時宜を得たものと考えられる。ここに、学際的かつ産学にまたがる広い視野の下で、研究者・技術者が議論・交流を深めることを目指し、「強光子場科学研究懇談会」(英文名:Japan Intense Light Field Science Society [JILS])を設立する。 |
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強光子場科学研究懇談会 の目的および事業内容 |
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本研究懇談会は、日本国内における強光子場科学および関連する学際的研究分野の振興、さらには、その活動の国際的な発信、そして、国際的な規模でのこの分野の振興に寄与することを目指す。その事業内容は以下の通りである。
- (1)強光子場科学に関する定期的な国際会議・国内会議の開催と運営
- 国内でのミーティング・研究会を行い、産学の研究者の自由な雰囲気での交流を促進する。また、毎年、秋に一回、国際会議を行い、国際的な規模での研究交流を支援する。
- (2)国際委員会の運営
- 強光子場科学に関する国際委員会(International Committee on Intense Laser Sciences)を支援し、その活動通じて、各国の研究者・技術者の間の議論・交流を促進する。
- (3)研究交流のための広報・出版事業
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- 本研究懇談会のウェブサイトのメンテナンスを行い、国内の産学の研究者間の交流と情報交換を支援する。
- 本研究懇談会の活動を年に一回、報告書として出版する。
- 国際会議のプロシーディングを出版する。
- 英文版の年次報告として、Annual Report on Intense Laser Sciences を出版し、総説が掲載される英文の総説誌として刊行する。
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